東芝2016年度業績見通し発表にみる企業分析(東京新聞より)
(東京新聞)
東芝が監査法人の意見のないまま業績(見通し)を発表したとの記事。
「経営再建中の東芝は十五日、二〇一七年三月期連結決算を、内容の外部チェックを担う監査法人が承認していない暫定的数値の業績見通しとして公表した。一方、経営再建の柱として売却を進める半導体フラッシュメモリー事業は、合弁会社をつくる米企業が売却手続きの差し止めを求めて国際仲裁裁判所に仲裁を申し立てた。
東芝が公表した決算の暫定値によると、米国の原子力子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)の破綻処理に伴い一兆三千六百億円の損失が発生し、最終的な純損益は九千五百億円の赤字。借入金などの負債が資産を上回る「債務超過」は五千四百億円になり、東証の規定で一部から二部に転落することが確実となった。来年三月までに半導体事業を売却するなどして債務超過を解消できない場合も、東芝は上場廃止となる。」
Pwcあらたとの関係や、WH関連事業の損失額についてしきりに報道がありますが、会社継続の観点からは、半導体メモリ事業の売却実現にエネルギーを投下すべきでは。
半導体メモリ事業の売却に関しては、WD社と係争の様相を呈しているようです。
WD社の具体的な主張内容は分かりませんが、尚のこと法的対抗策を講じ、先手を打つ必要があると思います。
当ブログの関連記事。
東芝のHPにも今回の業績発表資料が掲載されています。
(東芝 PDF資料)
WH関連の事業を非継続事業、その他を継続事業として数値を整理しています。
資料によると、継続事業の純損益は1200億円確保したものの、WHの連邦破産法適用による親会社保証を含む非継続事業の影響で1兆2600億円の損失を認識しています。
そして、非支配株主持分の調整を経て純損益9500億円の見通し、とのたてつけになっています。
東芝と米WD対立にみる企業分析(朝日より)
(朝日)
「東芝の半導体子会社「東芝メモリ」の売却について、協業する米ウエスタンデジタル(WD)は14日(日本時間15日朝)、国際仲裁裁判所に差し止めを求める仲裁を申し立てたと発表した。仲裁判断の内容によっては売却が難しくなる可能性がある。」
先日の当ブログの記事(東芝と米WD対立にみる企業分析)でも東芝とWDの対立を紹介しました。
東芝の主張は「支配権が移転する場合、売却に同意は不要」です。
WDはそもそも売却自体が契約違反であり、無効と言っているようですが、具体的な申立内容は東芝も確認中のようです。
大前提として、東芝の論拠を崩す契約書上の規程があるのでしょうか。
そもそも、WDの前身であるサンディスク(SD)がWDに買収された際、協同投資者としての同意を求められていないことから、東芝は自社の主張に自信をもっているようです。
「WDは東芝と合弁会社をつくり、四日市工場(三重県四日市市)で半導体メモリーを共同生産する。WDは東芝が同意なしに東芝メモリを売却することや、そのために合弁会社の持ち分を移したことについて「合弁の契約に明らかに違反している」と主張している。東芝は内容を確認中だとしている。」
東芝は半導体事業を売却するなど全く思慮になかったと思います。
大きなプロジェクトの契約締結は、実務上は性急な対応になるのでしょうが、契約解消を想定した法的リスクに備えることが肝要だと思います。
広島中央署盗難より-現金管理の原則(毎日より)
続報がありました。
金庫は施錠していたようですが、肝心の鍵を引き出しにしまっていた為、鍵自体を奪われ、盗まれてしまったようです。
「 事件は5月8日午後8時ごろ、会計課長が金庫を開けて現金がなくなっているのに気付いて発覚。金庫の鍵を置いていた机の引き出しの鍵が壊されていたことなどから、県警捜査3課などが窃盗容疑で捜査を始めた。
多額の現金の保管や鍵の保管場所などを知るのは一部の関係者に限られ、金庫周辺からは警察関係者以外の指紋などは検出されていない。会計課長が5月2日時点で引き出しに異常はなかったと説明していることから、犯行は、出勤する署員が少ない3~7日のゴールデンウイークに行われた可能性が高いという。県警は会計課員や詐欺事件の捜査員らを中心に事情聴取し、この期間の署員の出入りの状況と突き合わせ、容疑者の絞り込みを進めている。」
金庫の施錠は、ナンバーロック機能を併用していたのでしょうか。
ナンバーロックと、責任者交代時等ナンバーの定期的変更、また重要な保管事象が生じれば変更することが原則でしょう。
より近しい内部犯の可能性が高ければ、ナンバーロックも意味がないのかもしれませんが。
いずれにしても、他に保管場所がなかったのか疑問です。
身代金要求ウイルスにみる-法人が晒される詐欺リスク(毎日より)
身代金要求「ランサムウエア」世界で猛威 (毎日)
個人、法人を問わず身代金要求型ウイルス「ランサムウェア」が世界的に伝播しているとの記事。
「米国土安全保障省は12日、パソコンを凍結させ復旧と引き換えに金銭を要求するウイルス「ランサムウエア」の攻撃が世界各国で発生したと警告した。欧米の主要情報セキュリティー会社などによると、欧州や日本を含むアジア諸国など少なくとも99カ国で7万5000件の感染が確認されるなど国際的な混乱が生じており、さらに拡大する恐れもある。」
パソコンをロックして使用不能にし、ロック解除の代わりに仮想通貨「ビットコイン」での支払を要求されるようです。
サイバー犯罪に関連して、こちらも現在流行しているビジネス詐欺メールの記事。
事業者や従業員をだます送金詐欺 取引先や幹部を装うメールに注意 (シャニム)
「BECとは、「メール経由の“なりすまし”により企業や組織から金銭をだましとる送金詐欺」をいい、いわば振り込め詐欺の法人版のようなイメージといえます。具体的には、実在する取引先、社長や役員などになりすましたサイバー犯罪者が事業者や従業員に偽の送金指示メールなどを送り、犯罪者が用意した口座に送金させて金銭をだましとるもの。」
そもそも、普通の会社であれば口座情報登録の為にマスタ登録申請が必要でしょう。
送金担当者であれば、インターネットバンキング上で直接送金指示できるのかもしれませんが、対応する債務がなければ払いようもないでしょう。
契約も何もなく、支払だけ先行するというのは、取引上、余程の落ち度がない限り起こりえないと思います。
経理としても、第三者の承認を介さない送金は絶対にないと意識する必要があります。
国のBS-「国の借金」1071兆円過去最大(読売より)
国の借金が過去最高額との記事。
「財務省は10日、国債や一時的な資金を調達するための借入金、政府短期証券を合わせた「国の借金」の残高が、2017年3月末時点で1071兆5594億円になったと発表した。
16年12月末から5兆1360億円増え、過去最大を更新した。社会保障費などを賄うために発行した普通国債の残高が830兆5733億円と、16年12月末から4兆1999億円増えたことが最大の原因だ。」
財務省の発表はこちら。
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国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(平成29年3月末現在)
平成29年度は国債発行額を154兆円まで絞る計画のようです(平成28年度は補正予算で170兆円)。
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平成27年度のBSを確認すると、負債が資産を465兆円上回っている状況です。
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企業で言えば債務超過ということになりますが、国債の保有者はその8割を日銀、銀行・生損保など国内機関投資家で占めており、海外保有は1割弱であることから、企業での負債とは意味合いは全く異なります。
国内保有が9割以上であれば、極端な話、政府がやっているので、円を刷って返せばよいのでしょう。
低金利にあえぐ地方銀行経営-業界分析(産経 他より)
地方銀行の経営が低金利のあおりをうけ厳しくなっているとの記事。
株式など国債以外の有価証券投資、与信リスクのない自治体への貸出を伸ばしているようです。
「九州・山口8県の地方銀行の平成29年3月期決算が12日、出そろった。日銀のマイナス金利政策の影響を通年で受け、21銀行のうち13銀行が減収減益だった。本業のもうけを示すコア業務純益も、ほぼすべての銀行が前期比マイナスだった。収益基盤に大きな打撃を受けた各銀行は、生き残り策を模索する。」
「第一に貸出金利の低下だ。しかもマイナス金利の長期化が想定される中で、過去に実行した比較的高い金利の融資が、新たな低利融資に徐々に置き換わる。利息収入は将来にわたって減少が見込まれる。
また、国債を中心とする市場運用も、戦略の練り直しを迫られた。金利低下の中で、市場で取引される国債価格は上昇傾向にある。新たに国債を購入する場合、「高値づかみ」の恐れがある。「やみくもに運用すればマイナスをつかまされる」(西日本FHの谷川氏)状況だ。
十八銀行は国債への投資を抑制した。この結果、有価証券の保有残高がこの1年で約1千億円、減少した。西日本FHやふくおかフィナンシャルグループ(FG)の決算数字からも、同様の傾向が見られた。」
「融資、運用ともに環境が厳しい中、行き場を失ったカネはどこへ向かったのか。一つの答えが地方自治体だった。
九州・山口の地銀の多くが、自治体向け融資を増やした。例えば、十八銀行はは28年度中、自治体向け融資を441億円増やした。前年度に比べ17%のプラスだ。同じ期間に増加した貸出金全体(629億円)の7割にあたる。半面、企業向けなど事業性融資は、ほぼ横ばいだった。
ふくおかFGの傘下3銀行も、自治体向け融資が計842億円増加した。対前年度の伸び率は7・2%だった。」
こちらは中部地方の地銀の決算に関する記事。
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金融機関には資本金規制をはじめ厳格な規制が課せられています。
金融庁が提唱するフィデューシャリー・デュティー(受託者責任)により、手数料ビジネスも揺らいでいるところです。
「フィデューシャリー・デューティー」の衝撃 (日経ビジネス)
受託者の責任として、委託資産が晒されるリスクを小さくする為、事業性融資を絞るのは半ば致し方ない事情もあるのでしょう。
三菱東京UFJ銀行 → 三菱UFJ銀行へ社名変更(テレビ朝日より)
三菱東京UFJ銀行が社名を短縮するとの記事。
就活、転職活動時、社名を間違えないようにしましょう。
実務的には、銀行マスタの洗い替えがあるでしょう。
「「三菱東京UFJ銀行」が来年の春にも銀行名を「三菱UFJ銀行」に変更する方向で最終調整していることが分かりました。
三菱東京UFJ銀行は、2006年に旧東京三菱銀行と旧UFJ銀行が合併して誕生しました。ただ、現在の名前は「長すぎる」などの声もあったことから、来年春にも「東京」を取り、「三菱UFJ銀行」に変える方向で調整しています。持ち株会社は、すでに「三菱UFJフィナンシャルグループ」になっていて、これにそろえた形です。旧東京銀行は、かつて日本で唯一の外国為替銀行として営業していましたが、合併から20年余りで「東京」という名前が消えることになります。」
確かに、口頭レベルでフルネームが用いられることは少ないように思います。